ワシントンDC駐在記その2

 こんにちは、DC駐在中の渡辺欣乃です。この前の日曜日、駐在先の米国事務所でお世話になっているL弁護士たちのお誘いで、MGM National Harborのシアターで開催されたコンサートに行ってきました。美味しいお食事とコンサートを堪能し、また、L弁護士のお誕生日の前祝いもできて、忘れられない夜となりました。

 今回ご紹介したいのは、MGMへ行くまでの道のりです。私が住んでいるのはArlingtonBallstonという町ですが、そこからMGMまでは車で約3040分かかります。電車やバスを乗り継いで行くこともできますが、約1時間半かかります。車の便利さに魅力を感じつつも、L弁護士のピックアップのオファーを断り、自力で観光しながら行くことにしました。

 地図を見ながらネットで調べた結果、電車でアレキサンドリアへ行き、そこからウォータータクシーでポトマック川を渡って対岸のナショナルハーバーへ行き、そこから徒歩でMGMに向かうルートを選びました。直前にウォータータクシーのチケットが購入できるか不安だったので、出発前にネットで午後4:20の便を予約しました。せっかくなので、アレキサンドリアへ行く前に、以前から訪れたかったアーリントン国立墓地(Arlington National Cemetery)にも立ち寄ることにしました。

 自宅を11時半ごろに出発し、Metroのオレンジラインからブルーラインに乗り継ぎ、Arlington Cemetery駅で降りました。地上に上がると、遠くにそれらしきものが見えました。その時は分からなかったのですが、手前は女性軍人記念館で、奥の丘にあるのはアーリントンハウスです。


 アーリントン国立墓地は数々の戦争で戦死した兵士や国民的英雄など40万人以上が埋葬されている、全米もっとも有名な墓地だそうです。入り口は正面に見えているものではなく、左側の植え込み中にあります。セキュリティーチェックを経てビジターセンターに入ると、予想以上の人で賑わっており、観光地であることを改めて実感しました。インフォーメーションやツアーデスクが込み合っていたので、これらをスキップして早速園内へ!園内がとても広いですが、全部を見て回るつもりはなく、ジョン・F・ケネディの墓とアーリントンハウスと無名戦士の墓(Tomb of the Unknown Soldier)さえ見られればよいという計画でしたので、園内を回る有料の循環バスを利用せず、Googleマップを頼りに歩き始めました。まず目の前に広がる無数の墓石が広大な敷地を埋め尽くしており、その壮観さに圧倒されました。

 

 ジョン・F・ケネディの墓の近くまで行ったものの、フェンスで囲まれて近づくことはできませんでした。どうやら道路の舗装工事のようでした。残念ですが、次の目的地のアーリントンハウスを目指しました。アーリントンハウスは、南北戦争で南軍の司令官だったリー将軍の邸宅だったそうです。とても立派な建物で、ここからはDCの街全体を見渡すことができ、その素晴らしい眺めに感動しました。


 工事で一部の道がフェンスでふさがれていたため、Googleマップが指示した道が通れなかったので、来た道を戻り、改めて無名戦士の墓を目指しました。無名戦士の墓は、第1次世界大戦など数々の戦争で戦死した身元不明の兵士が埋葬されている大理石の墓石です。通称オールドガードという特別に訓練された衛兵によって24時間警護されています。しばらく観察すると、衛兵は墓石の前に敷かれている絨毯の上をゆっくりと往復し、1秒に1歩のスピードで21歩を歩いてから踵を鳴らして方向転換し、21秒を待ってまた21歩を歩くという動作を繰り返していました。この21という数字は敬意を表しているそうです。夏季は30分おきに衛兵交代式が行われており、到着した時間は13時前で、ちょうど良いタイミングで衛兵交代式を見ることができました。衛兵交代式は、監督する上官と交代する衛兵の登場で始まり、見物客は一斉に立ち上がり、静かに見守っていました。上官は口上を述べ、交代する衛兵たちはライフルの検査などを行ったのち、交代するというシンプルなものでしたが、衛兵たちの所作が美しく、静けさの中で踵を鳴らすコツコツという音だけが響いていました。とても厳粛で、こちらまで思わず背筋がピンと伸びました。


 ジョン・F・ケネディの墓はまた改めて訪れることにして、アーリントン国立墓地を後にしました。ブルーラインでさらに南下し、King Street駅で降りて、駅前で無料のトロリーに乗り、アレキサンドリアのオールドタウンを目指しました。King Streetは駅からポトマック川までの一直線の道で、終点まで行かず、街の雰囲気で適当なところに下車し、オールドタウンを散策することにしました。

 アレキサンドリアはアメリカの古都で、日本の鎌倉や金沢のイメージかもしれません。おしゃれなショップが立ち並び、どこをみても美しい町並みでした。写真を撮りながら散策する観光客のほか、道沿いのテラス席で食事する客、買い物客で賑わっていました。私も思わずかわいらしい雑貨屋や洋服屋に吸い込まれてしまい、なかなか先へ進めませんでした。

 市庁舎もとても素敵でした。

 アイスクリーム屋で休息をとりながらジェラートをいただき、さらに先に進むとポトマック川の畔に到着しました。ウォータータクシーの乗り場を確認したら、まだ時間があるので、魚雷工場美術センター(Torpedo Factory Art Center)を見学することにしました。ここは第2次世界大戦中の魚雷工場の跡地だそうで、ちょっと物騒な名前と裏腹に、様々なジャンルのギャラリーがたくさん入っていて、どれも個性的でじっくり見ていくと船の時間が来てしまい、急いで船乗り場に向かいました。

 名残惜しくアレキサンドリアとお別れして、ウォータータクシーに乗船しました。船は2階建てで、上の階は屋根はありません。ジョージタウンから乗船した先客がいたものの、そこそこ空いていました。遠くにアレキサンドリアとナショナルハーバーを結ぶ大橋が見えて気持ちも高ぶってきました。

 気持ちよい風にあたりながら進んでいくと、ナショナルハーバーのポトマック川ウォーターフロントパーク(Potomac River Waterfront Park)のシンボルである観覧車(キャピタル・ホイール)がだんだん大きく見えてきて、30分ほどで対岸に到着しました。考えてみれば、DCを通らずに船でバージニア州からメリーランド州に渡ったのですね。下船してすぐ地面に埋まっている巨人の彫刻作品「目醒(Awakening)」が見えて、街の雰囲気も古都のアレキサンドリアと全く違い、若々しくエネルギッシュでした。

 近辺の散策もほどほどにして、川沿いの道を進み、最終目的地のMGMを目指しました。川が穏やかで、雲は厚かったが、日差しも漏れて見え、良いお散歩でした。

 広い道に出ると、MGMが道路の反対側に見えてきました。信号がなくてどうやって渡ればいいか分からないでいると、前を歩いている人が歩行者の標識の前に待っていると、車が止まってくれるのに気づき、それにGoogleマップもここで渡れという指示を出しているので、なるほどと思い、一緒に渡ることにしました。それで、ついに目的地に到着しました。午後の5時半ころでした。出発してから6時間が経ち、ほどよく疲れてほどよくお腹も空いてきました。

 ディナー前に、このことをC弁護士に話したら「Sounds like an adventure!」と冗談を言ってくれました。車も便利ですけど、たまにあえて不便なことをすると、新たな発見が得られますし、それに、スマホさえあればどこへでも簡単に行ける便利な時代になったなと実感しました。

 今回訪れた町はまた機会があれば再訪したいと思います。皆様もDCに来る機会があれば少しだけ足をのばして、周辺のユニークな町を訪れてはいかがでしょうか。

 

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