米国駐在ブログ②ライドシェア
ご覧いただきありがとうございます。5/7から7/27までの約3ヶ月の予定で米国に駐在させて頂いております、日本弁理士の高木太尊(たかぎたける)です。
私の米国駐在は現在ちょうど折り返し付近ですが、ありがたいことに現在に至るまでに、シアトル、サンディエゴ、アーバイン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ワシントンD.C.、ニューヨーク、シカゴ、ボストンというたくさんの都市に滞在する機会がありました。そして、これらの都市の中、あるいは都市の間の移動において、車、電車、飛行機と様々な交通手段を使ってきました。そこで今回は、米国での移動手段について私が感じたこと・考えたことを紹介させて頂ければと思います。
ご存知のとおり、米国ではライドシェアの文化が非常に発達しており、アプリ一つで、好きなところから好きなところまで、予約時に決められた料金で移動することができます。今回の滞在では、米国の政治的な情勢もあり治安がなかなか読めない部分もあるので、公共交通機関が明らかに低リスクであると確信できる場合を除いては、”Pay for safety”を標語にライドシェアを活用するようにしています。
私はライドシェアを利用する際に、可能な限りドライバーの方とお話しさせて頂くことにしています。会話の内容は毎回多少は異なりますが、おおよその流れは以下です。
(0.Tysonという細身のアジア人のイメージとは真逆の名前で登録しているため、pick upの際に驚かれる。)
1.どこから来たの?どれくらいの期間いるの?と聞かれるので、日本から来たことと、3ヶ月の滞在で訪れた各地について話す。この中のどこかにドライバーに興味を持ってくれたら、その内容について話す。
2.その土地の治安や観光地について情報収集する。
3.ドライバーの出身国(or州)について話す。
私がドライバーと積極的に話す理由は、3つあります。
1つ目は、英語のトレーニングになるからです。
創英では、3ヶ月米国に駐在する人は、その前に数ヶ月〜半年間、英会話教室か英語コンサルを使って英語力を鍛えてから渡米することが一般的で、その費用(数十万円)は事務所が負担してくれます。しかし、今回私は、(忙しさにかまけて)このような英語の鍛錬をサボって渡米してしまいました。実際来てみると、過去に短期の留学経験があることもあり話す方は大概なんとかなるのですが、聞く方はなかなかそうは行きません。特に国際会議等に参加すると、いろいろな国の方と英語でお話しすることになるので、訛りも話す速さも様々で、恥ずかしながら何を伝えてくれているのかわからない場合も正直あります。
この点、ライドシェアのドライバーの方々もまた、国籍は幅広く様々です。よって、彼ら彼女らと話していると、色々な地域の訛りが混じった英語を頑張って聞き取ることになるので、自然に耳が慣れてきて、多少アクセントがおかしな英語でも理解できるようになってきます。これは、英会話教室や英語コンサルの先生の綺麗な教科書どおりの英語を聞く中では鍛えられない、大切な能力であると実感しています。しかも、かかる費用といえばドライバーへのtipを数ドル多めに払うくらいの話なので、日本で英会話に1時間1万円近く掛けて参加することよりも遥かに格安です。加えてこちらとしても気持ちよくtipを払えるので、これをやらない手はありません。
2つ目は、土地勘がない場所での情報収集になるからです。
訪れたことがない土地に降り立つにあたり、当然インターネット等を使って情報収集しては行くものの、最新の治安の状況や、極端に危ないわけではないけど近づかない方が無難な場所に関する情報はなかなか集めることが難しいです。この点、ライドシェアのドライバーの方々はその土地に住み、街を毎日見ている人ばかりですから、当然最新の状況を把握していますので、そこから得る情報は新鮮です。
サンフランシスコを訪れた際の例を挙げます。サンフランシスコは、コロナ禍を経て治安が大きく悪化してしまった土地として知られており、インターネットで調べると、車に乗っていても襲いかかってきて荷物を奪われるリスクがある、なんて話まで出てきます。そのため、かなり怯えながらライドシェアの車に乗り込んだわけですが、その中でドライバーの方に聞いた最新の情勢は、ネット上の情報と少し違っていました。彼によると、確かに昨年ごろまでは治安がかなり悪かったらしく、その原因は、薬物関係の政策に失敗して全米から薬物中毒者がサンフランシスコに集まってきてしまったことと、(正確な値は忘れてしまいましたが)罰金900ドル程度に届かない犯罪は軽犯罪扱いで逮捕の対象ではなかったため、通報したとしても警察が動いてくれず、実質的にローリスクで窃盗し放題の状況になっていたことだったようです。しかし、まず今年の初め頃に市長が変わって薬物関係の政策が軌道修正され、続いて大統領が変わって軽犯罪も逮捕の対象になったことで、現在は少なくとも車の中にいるところを襲われる、というようなことは大幅に減ったようです。とはいうものの、依然として薬物中毒者と浮浪者で溢れかえるブロックは存在し、ライドシェアの車で通過した際に、ドライバーの方が「ここには車以外では絶対に近づかない方がよい」と優しく警告してくれました。
このような情報は、新たに訪れた街での出張や観光を安全なものにするためには非常に有益ですので、これを聞かない手はありません。そして繰り返しになりますが、それにかかる費用はたった数ドルのtipです。加えて、ドライバーによっては観光情報をくれたりもします。
第3に、色々な国や地域の観光地や文化を知れるからです。
ライドシェアのドライバーの方のご出身は本当に様々で、もちろん地元出身の方もいらっしゃいますが、これまでお話しした中で覚えている範囲では、オマーン、スリランカ、ヨルダン、コロンビア、南アフリカ共和国、中国出身のドライバーの方に出会いました。特に、スリランカの方がお茶についてお話ししてくれたことや、ヨルダンの方が気温の振れ幅について説明してくれたことは印象に残っています。
このような機会は、普通に日本で暮らしている限り余程のことがないと訪れないので、単純にとても興味深く面白いです。加えて、国際会議等では色々な国の方々とお話しさせて頂くので、ライドシェアのドライバーの方から話を聞いたことがあるのと偶然同じ国と代理人とお話しすることになった際に、「OOで有名な国ですよね!」なんて一言言えることもあり、そうすると代理人はとても喜んでくれるので、この点でも聞きがいがあります。
なお、実はこの記事はシカゴからワシントンD.C.に戻る飛行機を待っているオヘア国際空港で書いていたのですが、パソコンをカタカタ打っていたところ、隣に座っていた見ず知らずの貴婦人に、「あなたが書いているのは何語なの?」と話しかけられ、そこから日本の観光地やお互いの仕事について10分ほど歓談することになりました。もちろん皆というわけではないですが、アメリカの方々は初対面の人とも躊躇せずに話せるtalkativeな人が多くて感心してしまいます。
余談ですが、アメリカの方々がこのような振る舞いをできるのは、仕事において少しでも良い待遇を求めて都市をまたいで転職していくのが当たり前の文化なので、当然その子供たちも小さい頃から常に周りの友達が変わる環境に置かれ、その結果として初対面の人と話すスキルが自然に身についているからである、という話を聞いたことがあります。真偽はわかりませんが、もし本当であれば、環境が人を育てる、の最たる例だと思いますので、大変興味深いです。
ちなみにその貴婦人は、10分ほど話した後、「本を買ってくるから荷物見ててね」と言って、荷物を置いてしばらくどこかに行ってしまいました。本当に私に興味を持ってくれたのか、それとも単純に荷物番兼ランドマークが欲しかっただけなのかわかりませんが、どちらであったとしても非常にアメリカらしい出来事で新鮮でした。
移動手段について綴ると申し上げた割に、ライドシェアの話だけで結構な文量になってしまいましたので、電車や飛行機の話は、もしまた機会があれば、ということにさせて頂こうと思います。
最後までお読み頂きありがとうございました。ありがたいことに大変忙しく過ごさせて頂いていますが、可能な限りブログを更新してまいりますので、またご覧いただけましたら幸いです。
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